今日はよく商売で語られる「顔の見える」ことの大切さについて実例をもとにコラムを書きます。
よく、商売をするうえで「顔が見えること」や「心が通うこと」というのが大切だと言われます。コロナ禍で商売の形態がどんどんかわり、実際の店舗での対面接客重視の商売から、オンライン上でのネットショップでの販売形態への切り替えは爆発的に増えました。ここ、湯沢市でも同じ現象は生じていて、これまでは遠方から来るお客さんが「来て」「見て」「触って」「実感して」買っていた商いの形態が、そもそも遠方からお客さんが来られなくなる=ネットを通じた情報発信のもと、オンラインでのストアでの商いに切り替えないといけない…というケースも多く出てきています。
以前、このブログでも新商品や掲載の新聞記事を紹介させていただいた「阿部始こけし店」もそうです。お店には店主の阿部均さんが集めた約1000本のこけしが所狭しとならび、まさにこけしのセレクトショップです。そんな阿部さんのお店のこけしは、こけし好きには垂涎ものの逸品が多く、お客さんは北は北海道から南は九州まで全国津々浦々でした。
「でした」です。そう、コロナの影響で、全国からお客さんが来られなくなったことで、これまで売り上げていたものが昨年2月ごろから蒸発してしまいました。
ゆざわ-Bizでは、よく「自分が売りたい商品やサービスのターゲットを想定して、そのターゲットにいかにピンポイントに情報を届けるかということを考え、ツールを選定する」ということが大事だと伝えます。その結果が、チラシによるアナログな情報発信であったり、ITツールを使ったウェブ発信であったりします。
はてさて、今回のケースにおいては、イベントもない中で、発信する先が全国津々浦々とあって、最良の手段はネットでの発信だということになり、昨年からゆざわ-Bizと阿部さんでは、地道に、そしてゆっくりではあるけれども確実にネットでの情報発信を一緒にしつづけていきました。もちろん、この間に、「こけしのアクセサリーやこけしを飾るこけし台など、ゆざわ-Bizが得意とする(本職の?)新商品の開発なども一緒にしています。ただし、こうして開発したものもお客さんが来られない中で発信をしていかなければなりません。そのためにも、ネットでの発信を地道にやり続けました。
このネット発信、以前のコラムで韓国料理屋のあけみ家さんのケースでも書かせていただきましたが、結果が出てくるのにはある程度時間がかかります。正解があるようで、正解がありません。決まった100%の正解がない理由としてはっきりと言えるのは「各事業者、各お店で強みが違うから」だと感じています。
阿部さんのケースでも開始からあれやこれやと試行錯誤しながら、半年以上の模索の結果、昨年末ごろから北海道や関東、そして九州など、文字通りコロナ前のような「全国津々浦々」から問い合わせが来るようになり、商品が再び動き始めています。
ネット経由のご注文、もちろんもとからいたお客さんからのものもありますが、圧倒的に多かったのは新規のお客さんです。
さて、このお客さんたち、購入の決め手はなんだったのでしょうか。
答えは「阿部さんの顔と人柄」だったそうです。
実は、阿部始こけし店では、プロモーションの一環で、ほそぼそと(そしてすごく簡単な)無料動画サイトのYou Tubeに挑戦しています。このYou Tubeのチャンネルは無料で作成したホームページにも埋め込んでいて、これを見た人たちが「こけしを売っている阿部さんがどんな人かわかるから、すごく電話しやすいし、連絡しやすい」という声が多かったそうです。
すなわち、ダイレクトにネットショップ機能からの注文ではなく、ホームページで「阿部さんの顔や性格」を見たうえで、「安心して」電話をしてきて注文をするという、デジタルとアナログのハイブリット注文でした。これは商品の性質も深く関係します。伝統工芸品として、一品ものが多いこけしの世界では、「自分が欲しいデザイン」のこけしは、相当程度お店側とお話をしながら買うこけしを「詰める」作業が必要です。この作業をするうえで、消費者自らが連絡を取り、やり取りをする先の店主は、もちろん「顔が見えたほうがいい」わけで、今回の新規のお客さんの皆さんも阿部さんの顔、話し方、雰囲気を見てお店に電話をしたということです。
こうしたことは実際にアドバイスする私としてはもともとわかっていたことではあるけれども、実際に生の消費者の声を阿部さん経由で聞いて、初めて実感をしました。
売る場所や形態は違えども、結局は「顔の見える商い」は重要だということでした。