本日の日経新聞東北面で、ゆざわ-Bizで日本政策金融公庫さんと一緒に支援させていただいている農業関連スタートアップのPilz(ピルツ・横手市)さんの記事が大きく掲載されています。秋田県はご存じの通りシイタケの一大産地で、特にこのピルツが会社を置く横手市はその中でも最大の産地です。
今回のピルツのビジネスモデルは、このシイタケの栽培の際に必ず使う「菌床」に着目したものです。菌床はシイタケ栽培の後に、廃菌床、いわゆる廃棄物であり「ゴミ」に変わります。1個あたりにかかるとされる菌床処分は1円。たかだか1円と思うかもしれませんが、栽培の規模が大きくなれば、20万個の菌床処分で20万円が費用としてはかかります。
菌床はシイタケ栽培のために栄養を注入して形成するのですが、ピルツではこの菌床に含まれる栄養素に目をつけ、カブトムシの幼虫を育てる「餌」として変えるビジネスモデルを生みだしました。カブトムシと侮るなかれ、なかにはカブトムシの王様といわれ、時には300万円以上で取引もされる「ヘラクレスオオカブト」など高額で取引されるものもあり、「金の卵」でもあります。
このビジネスモデル、何が面白いかというと、日経新聞の記事の中でも私のコメントが出ているのですが、「世の中で不要とされているものがお金を生み出す点」です。今回の廃菌床を活用する仕組みづくりにより、生産者にとって廃菌床を処分するコスト削減になるだけでなく、新たな収入源になる可能性も秘めています。循環型社会ではこうした取り組みが必須ですし、今回のようなビジネスモデルを生み出すには、少し変わった視点や発想が必要になり、その「センス」が非常に重要になってきます。
ゆざわ-Bizでも今年度は、こうした「不要とされているもの」であったり、「価値がないもの」とみられているものを、お金に変えていくという取り組みを推進しています。例としては、これも先日の日経新聞さんに取り上げられた「雪中貯蔵協会」の設立と、雪中貯蔵商品のリリースです。
この取り組み、ピルツさんと共通する点は、地域にとって頭を悩ませる「雪」という負の資源を使ってお金に変えるという試みだという点です。こうしたビジネスモデルは、首都圏にはない1次産業資源を有する秋田県をはじめとする地方から多く出てくる可能性を秘めています。柔軟な発想をもとに、地方から時には循環型社会を、時には、高付加価値の商品をうみ出していく取り組みは、次世代にもつながり、世の中を時には変えていく可能性を秘めたものです。この地で、こうしたビジネスモデルの支援に携われるのは、私にとって嬉しい限りです。
ピルツの記事は、日経新聞の電子版にも掲載されているので、下記、URLを記しておきます。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC18DK70Y1A610C2000000/