本日のご相談者は「阿部始こけし店」さん。こけしといえば、各工人の絵付けの部分が注目され、この絵の部分が商品の「差別化」になっています。しかし今回は「材質」で差別化をしてみました。こけしの材質は全国的に「いたやかえで」が大半を占めるのですが、「木地の材質にこだわってもいいのではないか」との発想のもと、「屋久杉」や「日本三大美林(青森ヒバ、秋田スギ、木曽ヒノキ)」で作ったこけしをリリースしたところ、「珍しい」と全国のこけしファンから非常に好評で、売れ行きも予想以上でした。材質にこだわったことで、その木材特有の「香り」も出て、見た目だけでなく、「嗅覚」でも楽しめるこけしになりました。
そして、また新たな「違う視点の販売の仕方」を始めました。「ビンテージこけし」というジャンルです。こけしは現在活躍する工人の方はもちろん、もうお亡くなりになられた工人の方々の古い作品も人気です(古いものは戦前の時代のものも多くあります)。しかし、こうした「骨とう品」に近いこけしは、通常のこけしと同じように扱われていたり、埋もれていたりしていたので、改めて古くて価値があるこけしを「ビンテージこけし」というカテゴリをつくり、販売を始めました。
そうなると、重要になってくるのは「そのビンテージこけしは本物か」という「鑑定」です。こけしの分野には、「鑑定」を行っている業界団体や協会などは実は存在しません。そして、こけしの「鑑定」を専門に行っているところもほとんどありません。そんな中、店主の阿部均さんは、秋田県こけし展の審査員をつとめており、すでに故人となった工人の作品としての真偽をよく「鑑定」している実績もあります。そこで、プライベートではありますが、「ビンテージこけし」の販売の際には、阿部さんや「目利き」として優秀なこけし工人の方々が鑑定し、その結果を「鑑定書」として発行する販売方法を始めました。
正直、まだないジャンルであり、おそらくこうしたこけしの販売方法はこれまでやっているところはありません。こけしのマーケットはもちろん大きくはありませんが、固定ファンは全国で多いため、これまでと違った販売の仕方やお客さんへのアプローチ方法はまだ存在すると思いますし、こうしたことに絶えず挑戦する阿部始こけし店さんを私たちも全面的に応援したいと思っています。