センター長の藤田です。近年、身内を含めて事業を引き継ぐ人が見つからずに廃業となる店舗が全国的にも多くなっており、こうした「事業承継問題」は全国各地どこでもついてまわる問題です。もちろん湯沢市でも同じ状況で、ゆざわ-Bizにも事業承継問題で訪れる相談者はいらっしゃいます。
湯沢市田町の「あっぷる美容室」が事業承継をテーマに相談に訪れたのは、2022年11月。それから約1年強で、事業承継が実現しました。事業を承継したのは、市内で理容業の創業を考えていた高橋貴大さんで、身内ではない第三者が事業を引き継ぐいわゆる「第三者事業承継」です。
第三者事業承継は近年、身内以外の承継として注目されていますが、ゆざわ-Bizでは今回のように、「第三者」の中でも特に「創業したい人」たちを結びつける第三者事業承継の在り方を模索しています。
創業する人にとっての第三者事業承継のメリットは、引き継ぐ会社ののれんにより、お客さんも一定数引き継ぐことになり、創業当初から売上のめどが立つことです。
通常、消費者を相手にしたサービス業創業の場合、一から店舗のお客さんを集めるところから始めます。もちろん当初想定していたよりも集客が落ち込むこともありますし、なかなか来店者が増えないことも予想されますし、すなわち「売上」はなかなか安定しないこともあります。
一方で、それまで営業を続けていた店舗を引き継ぐ場合、すでにお客さんがついている状態ですので売上が最初から立っている状態です。これは損益上も、もちろんキャッシュフロー上も、非常にメリットが高く、「お金を貸す」側の金融機関からしても安心材料が多く、創業時の融資も受けやすくなります。また消費者相手の店舗の場合ある程度基本設備を引き継ぐ「居ぬき」での承継が多いため、初期投資も抑えることができます。
一方でデメリットもあります。前の経営者の「のれん」のイメージが強い場合、新規顧客の獲得や、新しく承継する人のカラーを出しにくいという点があります。ただ、ここさえクリアすれば、既存顧客で売上を守りながら、新しい経営者のもと、新たなお客さんを集客することができるので、事業の持続可能性としてはポテンシャルが非常に高くなります。
かたや難しいのは、「譲る側」と「譲り受ける側」の相性もありますし、創業する人にとって、ゼロからの創業がいいのか、それとの第三者事業承継という選択肢を考えたほうがいいのかという判断です。こうした「仲人」的に第三者判断をできるのは、公的産業支援機関である我々でもあると思っており、また、我々でしかできない仕事だと感じています。
今回は、あっぷるの経営者の藤谷さんと高橋さんのお互いの状況、性格、やりたいこと、引き継げる資産・・・すべてを相談の中で見極めながら慎重におつなぎをした結果、非常にスムーズにお話がまとまりました。
あっぷるの店舗は1月20日で約40年の営業に終止符を打ちました。そして、改装などを経て3~4月からは新経営者となる高橋さんのもとで、新たなお店として「第二の人生(店生?)」がスタートします。
オープンの際はまたブログで盛大に取り上げさせていただきますので、皆さん、お楽しみに。