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(コラム)「当たり前」や「弱み」を「強み」に変える「対話」の大切さ

センター長日記

本日は、自分がセンター長として仕事をしている中で感じた「ビズモデルの強み」をテーマに書いてみようかと思います。もちろん、こうしたビズの特徴や強みは、ビズモデルの創設者である小出宗昭さんの数々の著書にも書かれていますが、このコラムは私自身、ビズモデルを遂行する当事者として、改めて実感したことを中心にまとめてみます。ビズモデルの支援のあり方など、本質論でもあったりするので、ちょっと今日は長めに書きますが、皆さん、小職の長文のドライブにお付き合いください。

今や全国津々浦々20か所以上に展開しているご当地の「ビズ」モデル。やっている当事者としては非常に嬉しいことに「事業者に寄り添った伴走型」「行列ができる相談所」「今までにない経営支援のスタイル」など様々な形でポジティブな表現のされ方をしています。

ポジティブな評価をされ続けている最大の理由は、ただ単に各地で「結果」が出ているからだと思います。「思います」という表現は良くないので、「出ているからです」と断言したほうがよさそうです。

3月に新型コロナウイルスの影響が本格化して以降、各地コロナ禍で、相談業務としては威力を発揮していますし、それは相談件数やメディアでの露出度にも現れていると思います。

私のいるゆざわ-Bizもそれは同様で、コロナの影響が始まった3月後半から、「よくもまぁこんだけ出たな」と自分自身で思うほど、メディアに出させていただきましたし、ビズから生まれたサービスも様々なメディアに登場しました。ビズとしては、注目されているうちが華なので(?)、私としては嬉しい限りですし、うちにいらっしゃる相談者さんにもプラスに働いているのはまず疑う余地はありません。

有難いことに3月以降、よく取材していただきました

しかし、そもそもなぜ威力を発揮しているのか?

それは、各地のビズが、着実に、そして基本に忠実に以下のやるべきことをしているからだと思います。うん、ここも「思います」じゃなくて「しているからです」ですね。

大まかにビズの特徴を書くと、小出宗昭さんが著書でも触れているように、「ターゲットを絞る」(これは前のコラムにも書いたことです)、「差別化する」(これも以前のコラムで書いた記憶が)などなどありますが、私がセンター長として、すなわち「当事者」としてビズモデルを実行している立場として実感しているのは、「一見事業者の『弱み』に見えたり『当たり前』の部分を、相談者との会話や知恵・アイディアを通して、時には見方を変えながら、『強み』へといかに変えること」だと思います。

これ、すなわち、センター長だったりアドバイザーのセンスであり、ビジネスの経験であり、「モノを多角的に見ることができるか」という能力の部分に関わってくるものなのですが、もう一つ重要な要素があります。

それは根本的な話なのですが、事業者さんとの「対話」です。

私も一事業者として会社をやっていた経験からすると、なかなか自分の強みって見えてこなかったり、気づいたりしないものです。そこを一人で悶々と考えるより、2人で知恵を出しながら考えるってのもいいもので、だいたい、あれやこれや話していると、今まで弱い部分だと思っていたものが「強み」にかわったりします。

そしてこの「あれやこれや」意見を出し合ったり、対話を通して、時にはセンター長の経験やセンスを使いながら、弱みを強みにして、新たな価値観を創出する・・・この「対話型」の支援自体が、これまでにほとんど例のないものなんだと思います。

たまに、民間の同業者の知り合いや知人でビズモデルに興味を持っている人から、「ビズモデルは支援のフレーム(フレームワーク)があるのだろう」という質問を受けます。そりゃそうですよね。全国的に結果を出しているのだから、コンサルティングファームのように、独自・共用のフレームワークがあり、それを様々に使いこなしたうえで支援をして、実績がでていると思われても仕方がないかと思われます。

それに対しての答えは一つ。

「フレームワーク、ないんですよ」

何故か?それが先に書いた「対話型」だからです。対話であるからこそ、その話は相対する二人のセンスやコミュニケーションによって左右されるので、非常に流動的で、やりとりする二人の経験や知識、はたまた二人の対話の「間合い」によって、内容は変わってきます。したがって、「フレーム」としては成立しえないのです。

あえて言うのであれば、「対話すること」がフレームなのかもしれませんね。

誤解がないように書くと、もちろんコンサルタント会社や、他の公的支援機関が「対話をしていない」ということはありません。もちろん、各ファームや機関が使っているフレームワークに効果がないということでも全くありません。

対話という面でいうと、上記の場合は、自分たちの支援やサポート、コンサルティング手法のフレームがあって、その過程で「対話」が起こるため、ビズモデルで行っている事業者さんとの「対話(=すなわち、対話が出発点となり、そこから柔軟に方向性を決めていくスタイル)」とは少し違う気がします。

こうした「対話を通して、逆に支援の仕方をその会社に合わせて決めていく」というスタイルは私もこれまで見たことがなかったですし、これは今私たちがサポートをさせていただいている中小企業、特に日本では「零細」と言われがちな事業者に対してこそ威力を発揮すると確信を持っています。

これは世界的に見れば賛否両論も多いですが、日本の小規模事業者(中規模もそうですが)は経営する人達がマルチタスク化していて(経営する人も、社員もですけどね・・)、一人がある程度、いやほぼすべての部分を把握していて、そのうえで持ち得る知識や経験を使って会社の意思決定ができます。そのため、こちらとしても相手から「対話」で引き出せる情報量が非常に多く、対話を通して行うアイディアのキャッチボールが、かなりの短時間で、しかも非常に効率的にすすむため、あえてフレームワークを導入し当てはめて・・・ということをしなくていいし、逆にしないほうがいいのだと感じています。

そしてもう一つ。対話の中で、いかに事業者の強みや面白い部分を引き出せるかというのは、対話「力」が重要だというのも、日々の相談業務で痛感します。いまだに、相談が終わってから「あぁ、あの時はこういう話の振りをしておけばよかったなぁ」とか、この短い1時間の中で私の中の反省点も多くあります。

この「対話」。読んで字のごとく「2人でお話しする」だけなんですが、実は奥が深いと思っています。話って、先ほども書いたように、間合いだったり、お互いの信頼関係だったり、話の「引き出し」だったりするんですよね。昔、新聞社に勤めていた際に、かなり上の先輩記者が、「取材は対話。そして対話は人生の総合力だ」とかなんとか言っていたような記憶もありますが、まさにそうだと思います。

今の相談業務も当時の取材活動も似ていて、雑学でも身の回りの体験でも、これまでの経験や知識でも、「話の引き出し」は重要で、そこから話が生まれて、いいアイディアが生まれたりするんです。そしてこの空間をつくるために、私はご存じのように相談中あまりメモを取りません。別に、メモを取らないからといって、私が適当に話を聞いているわけではありません。メモやパソコン前に話していると、なんか記録されていると思って、話しづらいじゃないですか。これは新聞社時代も同様で、私の場合はほぼすべて「オフレコ取材」がメインだったので、話を聞くときは「メモなし」「PCなし」「全部頭の中に内容を整理して記録」でした。そんな経験から、三つ子の魂百までとはよく言ったもので、でいまだにこのスタイルを貫いています。

もちろん、メモることもたまにはしますが、原則「ノーメモ」でやっています

少し話がそれましたが、話の引き出しに関して言うと、自分の中ではまだ誇れるものではありませんが、幸か不幸かこれまでの人生で人並み以上に色々な経験をさせていただいているので、これまた人並み以上には私自身の中で「引き出しになりうるもの」は持ち合わせています。これは以前コラムで記載した私の「ポータブルスキル」によるところが多いと感じています(これ、1発目のオチですので)。

さて、長々とビズモデルについて私が感じていることを書きましたが、例を少しご紹介しようかなと思います。

ビズの支援例は、はなばなしくメディアに取り上げられたケースが目立ってしまいますが、こうしたケース以外でも、私の中で「こうした支援がビズ独特の支援だ」と感じるものがあります。ここでご紹介するのは、今回のテーマでもある、対話をしていくうちに、それまで一見は弱みだった部分が、店の目指す方向性の中で、「武器」になったケースです。

先日、このビズのブログでも取り上げさせていただいた、湯沢市倉内にある「レストラン・びいどろ」さんです。創業40年で、現在は息子さんの葛西英樹さんが後を継ぎ、お父さんの代からの「皆が親しめる」伝統の味を守っています。

葛西さんがセンターに来られてから、びいどろさんの進むべき方向性をよく話し合いました。葛西さんは、都内のイタリアンなどで修行したのちに、湯沢にもどり、びいどろの厨房に入りました。葛西さんご本人としては「ナポリタン」や「鉄板焼きチーズオムライス」など創業時から続く伝統の味を守りたいという想いもある一方、今時のおしゃれなメニューもつくったほうがいいかという想いの葛藤もあったそうです。

ただし、お話をする中で、葛西さんの中で一貫してぶれないところがありました。「味を守りながら、家族が楽しめる大衆レストランでありたい」という点です。

これ、素晴らしいことだと思います。長く続くお店は「代々、家族に愛される」お店なんです。なので、これを実現するために、何かいいアイディアはないかと思いました。

今でも、当時の会話の中でのフレーズを覚えているのですが、葛西さんの「うちのあの座敷は古くて・・・」というフレーズが一瞬、私の中の経験や知識などと重なり、「家族が楽しめる大衆レストランを目指したい」という言葉と重なりました。

家族が楽しめる=家族で来て長居できる=小さい子供が長くお店にいれる=自分の娘が小さいときは、あえて座敷の店を選んでいた(子供が眠くなっても寝かせておけるように)というのが頭の中でつながったんですね。「そういえば、このエリアで、子連れで長居ができうお店があまりないな。逆に言うと、こうした空間を作れば、このお座敷が武器になるのではないか」と。

それに加え、びいどろさんには「お子様ランチ」もありました。お子様ランチ、やっぱり子供には鉄板なんですね。

一見すると、今のスタイルにはそんなになじまない「お座敷」を活用しながら、子どもにとって鉄板のお子様ランチを提供する。その結果、子どもが「行きたい」という店をつくることができれば、親は家族で外食をする際、かなりの部分で子供が行きたい店にいく(行かざるを得ない)ので、目標とする「家族連れに愛される大衆レストラン」になるのではないかという流れでした。

その中で、子連れの家族が来店しやすい(来店する動機になりえる)「お座敷」を、さらに子供が楽しめる、そしてリピーターになりえるしかけを作るかを、葛西さんと一緒に相談の中でアイディア出しをしていきました。もちろん、大掛かりな内装の改修工事など大きな出費が必要なく、「今の設備や状況をなるべく利用したままコンセプトを変えていく」という作業が大切です。

ざっくりと私のほうから出したお座敷を利用した「キッズスペース」のアディアは、私のベトナム時代の経験によるものです。私が住んでいたベトナム南部のホーチミン市は、街中の多くのレストランで、子ども連れが長居できるよう、子どもたちが遊べるスペースがあり、子連れの家族でにぎわっていました。このスペースは特に豪華なものである必要はなく、マットと本やボールなど「とりあえず子供が遊べる何か」がある程度のものがほとんどです。

びいどろのキッズルームには、葛西さんのアイディアで、室内ブランコや絵本、ブロックなど、簡単なものだけれども、子どもたちが夢中になれそうなものを置きました。

そこから、まだ離乳食を食べている子どもを連れてくる家族もいるだろうと、離乳食を温める電子レンジや調乳ポットを置こうというのも、葛西さんのアイディアです。

「子どもが楽しめる空間を」と、葛西さんのアイディアが詰まった店内のキッズスペースです。
離乳食の持ち込みOKで、それを温める電子レンジや、調乳ポットも。これは幼い子を持つ家族にはありがたいサービスです。

そして、最後は「机でお絵描き」です。これは私がいたベトナム・ホーチミン市の「アルフレスコ」というイタリア料理のチェーン店で行っていたサービスなのですが、子どもが食事の提供を待っている時間や、家族が食べている時間に自由に机でお絵描きができるという仕掛けです。これ、ただ単に画用紙とクレヨンをテーブルに置いただけなのですが、これが実は子どもには大うけで、うちの娘もこのお絵描きがしたいために、よくこの店を「ご指名」していました。

こうして完成したスペースは、秋田県南にはまだあまりなく、もちろん「家族で楽しめるレストラン」も県南では珍しい空間になったと自負しています。ともすれば、「お座敷のスペース」というのは、時代には逆行するスペースになってしまいますが、それを対話によって、本来お店がターゲットとしている客層を集客するための「強み」に変えた例だと言えます。

新型コロナウイルスの影響により、ビジネスモデルの転換点を余儀なくされたり、逆に新しい生活様式に対応するために「新たなビジネスモデル」や「商品」が生まれたりしています。

こした中で、自分たちの事業でともすると「当たり前」だったり「弱み」と受け取りがちな部分を、いま一度考えてみると、それが自然に「強み」にかわるかもしれません。

その「強み」を発見するためにも、少しお時間をいただいて、ゆざわ-Bizに来てみてはいかがでしょう?話すだけならタダ。そして幸運なことに何回来てもタダですので。

ということで、今日も、これが「オチ」です。つまり、皆さん、一回来てみてくださいね、ということです。

それでは不定期コラム、次回をお楽しみに!

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