相談事例
稲庭うどんの「切れ端」からアップサイクル発泡酒。ロス削減の取り組みを支援
稲庭うどん小川 様
近年環境問題への意識が高まるなか、「廃棄削減」「廃棄ゼロ」を目指す中小企業の数も格段と増えてきました。ゆざわ-Bizでもこうした事業者の皆様の要望に支援としてお答えし、「見える形」での商品化などに繋げていっています。こうしたロス削減の取り組みや、その流れで生まれた近年話題の「アップサイクル商品」がどのように生まれていき、どのように売上拡大に結びついていったのかを、「稲庭うどん小川」さんのケースを例に見ていきたいと思います。
抱えていた悩み・課題
ゆざわ-Bizへの相談のきっかけ
「製造工程でどうしても出てしまう切れ端を現在は有償で処分している。せっかく食べられるのにもったいないので、なにか有効活用はできないか」。通常の売上UPの話題の中で出た小川専務の相談が、今回の「切れ端有効活用プロジェクト」の始まりでした。
話を聞いてみると、稲庭うどんの製造工程では、乾燥した麺を一定の長さに切って整える際に、どうしても長さ数センチの切れ端が出てしまいます。この切れ端は通常のうどんと品質は一緒のため食べることはできますが、長さが短く商品にならないことから、稲庭うどん小川ではこれまで有効活用を積極的にできずにいました。
「せっかく食べられるものを、お金を払って廃棄している状態なので、無償でもいいので何か有効活用できないか」との相談をうけ、ゆざわ-Bizでは、約1年にわたる「切れ端の有効活用」の支援の模索を開始します。
話を聞いてみると、稲庭うどんの製造工程では、乾燥した麺を一定の長さに切って整える際に、どうしても長さ数センチの切れ端が出てしまいます。この切れ端は通常のうどんと品質は一緒のため食べることはできますが、長さが短く商品にならないことから、稲庭うどん小川ではこれまで有効活用を積極的にできずにいました。
「せっかく食べられるものを、お金を払って廃棄している状態なので、無償でもいいので何か有効活用できないか」との相談をうけ、ゆざわ-Bizでは、約1年にわたる「切れ端の有効活用」の支援の模索を開始します。
ゆざわ-Bizからの提案
ゆざわ-Bizからは2つの方向性を提案しました。まずは、大量に余っている切れ端をすぐに有効活用する「寄贈」という選択肢です。有償で処分しているコストをゼロにするのと、会社としての「社会貢献」という意味合いでも非常に有効です。
ただし、せっかく「寄贈」するので、せっかく寄贈をするので、「話題性」はしっかりと持たせたうえで、寄贈先も喜び、しかも稲庭うどん小川にとっても会社のブランディングにもつながる先をゆざわ-Bizでは模索しました。そこで対象に上がったのが、高齢者福祉施設でした。
長さ3センチという商品としては成立しない切れ端の長さの「強み」を活かした寄贈先です。施設に入居するかむ力が弱くなった高齢者にとっては、短いうどんが逆にメリットにとなります。また高齢者の中では稲庭うどんは地元では「高級品」というイメージも強いため、日々の食卓に出てくれば喜ばれるはずです。
ゆざわ-Bizに相談に来る、横手市の高齢者福祉施設「雁の郷」に声をかけると「入居する高齢者向けのメニューに使う材料として、短いうどんは非常にありがたい」という意見で、早速小川さんをつなぎ、寄贈につながりました。
予想通り、施設に入居するお年寄りからは、細切れで食べやすい高級品の稲庭うどんの切れ端は好評で、この寄贈は秋田県内でも反響を呼び、県内で高齢者福祉施設向けの給食事業を展開する会社への寄贈も決まりました。
そして、次に提案したのが「切れ端を使ったアップサイクル商品」です。近年、「リサイクル」ではなく、もとのロス材に付加価値を持たせて蘇らせる「アップサイクル」という商品カテゴリーが多く登場しています。こうした商品は「エシカル消費(消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと)」というマーケットに一定のニーズがあり、また取り組む企業の環境経営にも一役買います。
ちょうど同じころ、ゆざわ-Bizへ相談に来るクラフトビールメーカーの羽後麦酒(秋田県羽後町)から「ビールや発泡酒を醸造する際の副原料に、地元の食材を使いたい」との相談があったことが筆者の頭の中で結びつきました。
近年、廃棄されるパンの“みみ”を原料にしたビールなど海外で「アップサイクルビール」が出始めているのに加え、ビールの分野には小麦を原料の一部に使ったホワイトエールがあることから、原料が小麦粉の稲庭うどんを副原料に作っても美味しい発泡酒が作れるのではないかと思い、羽後麦酒に聞くと、「副原料としては魅力的な素材」との回答が返ってきました。
湯沢市は稲庭うどんの産地で、県外から来た多くの人がお土産品として稲庭うどんを購入していきますが、稲庭うどんに関連したほかのお土産品はありません。その点で、近年はご当地のクラフトビールブームでもあり、お土産品としても、稲庭うどんを副原料にした発泡酒を造れば、話題性もあって地域の名産品になるのではないかとも考えました。早速小川さんに提案したところ「ぜひやりましょう」と前向きで、羽後麦酒と連携した商品開発が始まりました。
ただし、せっかく「寄贈」するので、せっかく寄贈をするので、「話題性」はしっかりと持たせたうえで、寄贈先も喜び、しかも稲庭うどん小川にとっても会社のブランディングにもつながる先をゆざわ-Bizでは模索しました。そこで対象に上がったのが、高齢者福祉施設でした。
長さ3センチという商品としては成立しない切れ端の長さの「強み」を活かした寄贈先です。施設に入居するかむ力が弱くなった高齢者にとっては、短いうどんが逆にメリットにとなります。また高齢者の中では稲庭うどんは地元では「高級品」というイメージも強いため、日々の食卓に出てくれば喜ばれるはずです。
ゆざわ-Bizに相談に来る、横手市の高齢者福祉施設「雁の郷」に声をかけると「入居する高齢者向けのメニューに使う材料として、短いうどんは非常にありがたい」という意見で、早速小川さんをつなぎ、寄贈につながりました。
予想通り、施設に入居するお年寄りからは、細切れで食べやすい高級品の稲庭うどんの切れ端は好評で、この寄贈は秋田県内でも反響を呼び、県内で高齢者福祉施設向けの給食事業を展開する会社への寄贈も決まりました。
そして、次に提案したのが「切れ端を使ったアップサイクル商品」です。近年、「リサイクル」ではなく、もとのロス材に付加価値を持たせて蘇らせる「アップサイクル」という商品カテゴリーが多く登場しています。こうした商品は「エシカル消費(消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと)」というマーケットに一定のニーズがあり、また取り組む企業の環境経営にも一役買います。
ちょうど同じころ、ゆざわ-Bizへ相談に来るクラフトビールメーカーの羽後麦酒(秋田県羽後町)から「ビールや発泡酒を醸造する際の副原料に、地元の食材を使いたい」との相談があったことが筆者の頭の中で結びつきました。
近年、廃棄されるパンの“みみ”を原料にしたビールなど海外で「アップサイクルビール」が出始めているのに加え、ビールの分野には小麦を原料の一部に使ったホワイトエールがあることから、原料が小麦粉の稲庭うどんを副原料に作っても美味しい発泡酒が作れるのではないかと思い、羽後麦酒に聞くと、「副原料としては魅力的な素材」との回答が返ってきました。
湯沢市は稲庭うどんの産地で、県外から来た多くの人がお土産品として稲庭うどんを購入していきますが、稲庭うどんに関連したほかのお土産品はありません。その点で、近年はご当地のクラフトビールブームでもあり、お土産品としても、稲庭うどんを副原料にした発泡酒を造れば、話題性もあって地域の名産品になるのではないかとも考えました。早速小川さんに提案したところ「ぜひやりましょう」と前向きで、羽後麦酒と連携した商品開発が始まりました。
提案後の成果
乾麺の製造工程では塩を練りこんでいるため、切れ端には塩分が含まれています。塩分を含んだ稲庭うどんを副原料に発泡酒を作ると、どのような味がするのかが問題となるため、稲庭うどん小川では、秋田県総合食品研究センターで事前に発酵試験と分析を行ったほか、塩分濃度をわけながら、味の分析も行いました。稲庭うどんを副原料につかっていることを消費者に感じてもらいたいことから、ほのかな塩味を感じるテイストに仕上げる方向に決まり、製品開発の分析や開発に半年以上を要し、2023年7月20日に稲庭うどんの切れ端を副原料にしたアップサイクルビールが完成しました。
稲庭うどん小川では、初期の仕込みは300本と少量で行い、地元の道の駅や、スーパーマーケットなどで販売を開始したところ、すぐに完売となりました。消費者からも「さわやかな苦みと、少し塩の香りがしてとても美味しい」と好評で、また今回の取り組みを見て、初めて稲庭うどん小川の商品を知ったという消費者もいたといいます。販売開始から取引先からの商談や新たな引き合いもあり、増産も決定しました。
「切れ端」をアップサイクルした発泡酒は、話題を呼び、2023年の東北で最大のお土産コンテストである「新東北みやげコンテスト」で「アイディア特別賞」も受賞しました。
また、高齢者福祉施設への寄贈も含め、稲庭うどん小川の幅広いロス削減の取り組みが評価され、秋田県内でSDGsの優れた取組を行う企業等を表彰する「あきたSDGsアワード2023」も受賞しました。
「環境経営」や「エシカル経営」はともすると大きな企業が取り組む課題と見られがちですが、中小企業でもこうして世間から注目を浴びる取り組みは可能です。こうした「中小企業の挑戦」をゆざわ-Bizではこれからも知恵とアイディアでサポートをしていきたいと思います。
稲庭うどん小川では、初期の仕込みは300本と少量で行い、地元の道の駅や、スーパーマーケットなどで販売を開始したところ、すぐに完売となりました。消費者からも「さわやかな苦みと、少し塩の香りがしてとても美味しい」と好評で、また今回の取り組みを見て、初めて稲庭うどん小川の商品を知ったという消費者もいたといいます。販売開始から取引先からの商談や新たな引き合いもあり、増産も決定しました。
「切れ端」をアップサイクルした発泡酒は、話題を呼び、2023年の東北で最大のお土産コンテストである「新東北みやげコンテスト」で「アイディア特別賞」も受賞しました。
また、高齢者福祉施設への寄贈も含め、稲庭うどん小川の幅広いロス削減の取り組みが評価され、秋田県内でSDGsの優れた取組を行う企業等を表彰する「あきたSDGsアワード2023」も受賞しました。
「環境経営」や「エシカル経営」はともすると大きな企業が取り組む課題と見られがちですが、中小企業でもこうして世間から注目を浴びる取り組みは可能です。こうした「中小企業の挑戦」をゆざわ-Bizではこれからも知恵とアイディアでサポートをしていきたいと思います。